鰹節。これは日本の伝統的な食材であり、僕達の食生活に欠かせない存在です。しかし、その価値を十分に認識している人は少ないかもしれません。
大正、昭和初期では、祝い事が家であるときのに、昆布を買ってきて、鰹節を家で削り、出汁を取り、お祝いをしたとおじいちゃんから聞かされました。ちなみに僕の少年時代に母親が鰹や昆布で出汁を取っている姿は見ていません。
僕もこの業界に携わるまでは、恥ずかしながら「鰹節=お好み焼きの上にかけるもの、トッピングで使う」認識でした。(笑)
なんとなく出汁を取る食材だと分かっていても、「出汁の取り方」「鰹節の選び方」は分からないですよね。
そんな方に鰹節の魅力について詳しく紹介していきます。
■鰹節(出汁)の魅力
鰹節は、乾燥させた鰹の身を薄く削ったもので、そのうま味が日本料理の多くに利用されています。出汁の元として、あるいは料理のトッピングとして、鰹節の風味は僕たちの味覚を豊かにしてくれます。それは、鰹節が含むうま味成分、特にイノシン酸とグルタミン酸が味の奥深さを生み出しています。
■鰹節の製造過程
鰹節の製造は、古来からの技術と手間ひまをかけた手作業が必要です。鰹は、新鮮な状態で素早く加工され、燻製、乾燥、発酵という工程を経て、最終的に鰹節として僕達の食卓に届きます。この一連の工程が、鰹節特有の香りと風味を引き出す秘訣です。
■良質な鰹節の選び方
良質な鰹節を選ぶポイントは、「色」を見極める事。
良質な物ほど薄いピンク色をしています。
茶色に近い鰹節は、酸化が進んでいるか、元の鰹節に油分多い事が挙げられます、他にもカツオ漁の多くが巻き網漁になり、カツオがぶつかり合うことで傷ができ、海水が染み込み塩分の高い身になる事でピンク色の綺麗な鰹節に出来上がらない事があります。
スッキリとした出汁を取りたい場合は薄ピンク色の鰹節ををお勧めします。
鰹節には大きく分けると「枯本節」と「荒本節」の2種類あります。
わかりやすく言うと、カビ付きの鰹節かそうではないかの違いです。結論から言うと、カビ付き「枯本節」方がうま味成分が多く含まれており、一般的には「枯本節」の方が美味しいとされています。
しかし、京都の料亭やミシュラン3つ星店で使われている鰹節は「荒本節」の割合が多いです。
価格的な面もあります。「枯本節」はカビ付け、乾燥の作業を数回繰り返し、鰹節内の水分を極限まで取り除き、うま味の成分を最大まで増やします。カビ付けの作業は「荒本節」に比べると手間と時間がかかる為、価格も高くなります。
味の面では、うま味を多く感じるのは「枯本節」ですが、「枯本節」独特のカビ臭が気になる料理人の方が多いのも事実です。初めて出汁を取られる方には「荒本節」をお勧めします。
■鰹出汁の取り方
分量:水に対して2%~3%が標準です。
例)水:2ℓ 鰹節:40g~60g
取り方:水を沸騰させて火を止めます。その後、鰹節を入れ沈むのを待ち、全部の鰹節が沈んでから1分~3分放置します。あとは鰹節を漉して完成です。
鰹出汁だけでも美味しいですが、昆布出汁と組み合わせることで8倍のうま味を感じる事が出来ます。
■かつお節のうま味成分
鰹節が保有しているうま味成分を紹介していきます。以前にも紹介しましたが昆布の主なうま味成分は「グルタミン酸」です。鰹節は「イノシン酸」が主なうま味成分になります。
昆布・グルタミン酸×鰹・イノシン酸を合わせる事で8倍のうま味を感じる事が出来ます。(うま味の相乗効果)これは皆さんもなんとなくわかりますよね!CMでも「鰹と昆布合わせ出汁」とかやってますし(笑)
料理をする上で大事な事はグルタミン酸とイノシンン酸をかけ合わせる事が重要です。
日本で代表的なのが「うどん出汁」「お吸い物出汁」「味噌汁」など、
マクドナルドでも同じような事が言えます。
パン(小麦)の主なうま味成分はグルタミン酸。
中の具材ハンバーグ、鶏、ベーコンのうま味はイノシン酸です。この組み合わせがうま味の相乗効果を起こしよりおいしく感じるのです。
どこの国の料理もグルタミン酸食材とイノシン酸食材をうまく組み合わせて出来上がっています。
その中でもなぜ鰹節なのか?
それは、どの食材よりもイノシン酸保有量が多いからです。マグロ、ブリ、鯛を刺身で食べると右に出るものはないと思うかもしれませんが、実は鰹節のうま味成分はその2倍以上あるんです。
ついでに、「うま味の相乗効果」を生んでくれる昆布のグルタミン酸保有量もご紹介しておきます。
有名の食材ではトマト(ドライトマト)海苔、わかめ、干しシイタケ、醤油が上げられますが、昆布はこれらの2倍以上のグルタミン酸を保有しています。(うま味の成分表は下記のリンクから確認できます)
特定非営利活動法人でうま味について研究されている団体様です。
■世界に広がるかつお節
ご先祖様は本当にすごいですね。
紹介したようなデータがあるわけでもないのに自然とうま味の多い食材を日本の文化として引き継いでいる。
今では「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されており海外からの観光客も和食を食べる事を目的に日本に来ることも多くなっています。
僕は京都で働いており観光地にもよく行きますが日本人より外国人観光客の方がうどん出汁、蕎麦出汁を残さず飲んでいかれるそうです。(笑)
最近では海外にも鰹節は多く販売されています。アメリカのブルックリンでは出汁専門店が去年オープンしました。驚くことに現地の方で出汁を取られる方がけっこうおられるみたいですよ
↑↑↑インスタアカウントもありますよ。
2023年9月にNHKでも海外の鰹節特集が組まれていました。特にヨーロッパを中心に映されていました。ヨーロッパへの輸出規制はとても厳しく日本の鰹節を送る事は出来なかったのですが、鰹節最大水揚げ量を誇る、宮崎県枕崎のメーカーがフランスで自社工場を作りヨーロッパでも使える鰹節を開発されています。始めはフランスにある日本料理屋への販売が多かったそうですが、今では現地のフランス料理店への卸も多くなっています。
一般家庭にもすごいスピード普及しています。出汁を取る用ではなくトッピングでの使用が多いそうですが、日本の文化は確実に世界へ広がっています。
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